【第5回】増量・減量・維持|目的別の食事戦略

はじめに

「腹筋はキッチンで作られる(Abs are made in the kitchen)」

このフィットネス業界でよく言われる格言を知っていますか?

どれだけハードに筋トレをしても、食事が間違っていれば体は変わりません。

逆に、正しい食事をすれば、トレーニングの効果は何倍にも跳ね上がります。

アメリカのパーソナルトレーナー協会(NASM)によると、体作りの成功要因は、運動30%、栄養50%、休息20%の割合だと言われています。

つまり、食事が最も重要なのです。

しかし、多くの人は食事を軽視しています。

「とりあえずプロテイン飲んでおけばいいでしょ?」

「炭水化物は太るから食べない」

「カロリーだけ気にすればいい」

これらは全て間違いです。

この記事では、90日で確実に体を変えるための科学的に正しい食事戦略を徹底解説します。

増量したい人、減量したい人、現状維持したい人、それぞれの目的に合わせた具体的な食事法をお伝えします。

さあ、キッチンで理想の体を作り上げましょう。

超基本:カロリーと栄養素

まず理解すべき基本: カロリー収支とマクロ栄養素

食事戦略の前に、絶対に理解しておくべき2つの概念があります。

1. カロリー収支が全ての基本

体重の増減は、シンプルな計算式で決まります。

摂取カロリー > 消費カロリー = 体重増加(増量)摂取カロリー < 消費カロリー = 体重減少(減量)摂取カロリー = 消費カロリー = 体重維持

この法則は「エネルギー保存の法則」に基づいており、栄養学の基本原則です。

どんなに「体に良い食事」をしても、カロリー収支を無視すれば結果は出ません。

まずは、あなたの1日の消費カロリーを知る必要があります。

1日の消費カロリーの計算方法

一般的に使われる計算式として、*ハリス・ベネディクト方程式(Harris-Benedict Equation)*があります。

より簡易的な計算として、以下の方法を使います:

ステップ1: 基礎代謝を計算

基礎代謝(何もしなくても消費するカロリー) = 体重(kg) × 24

※これは簡易計算です。より正確には、年齢・性別・筋肉量も考慮する必要がありますが、実用上はこれで十分です。

例: 体重70kgの人 = 70 × 24 = 1,680kcal

ステップ2: 活動レベルを掛ける(身体活動レベル: PAL)

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、身体活動レベルは以下のように分類されます:

• 低い(デスクワーク中心): 基礎代謝 × 1.50

• ふつう(立ち仕事・軽い運動): 基礎代謝 × 1.75

• 高い(力仕事・ハードな運動): 基礎代謝 × 2.00

筋トレを週3〜4回行う場合は「ふつう」と「高い」の中間、約1.55〜1.7を使います。

例: 週3回筋トレする人(体重70kg) = 1,680 × 1.6 = 約2,700kcal

あなたの1日の消費カロリー: 約〇〇kcal

この数値をもとに、目的別にカロリーを調整します。

2. マクロ栄養素のバランス

カロリーだけでなく、「何を食べるか」も重要です。

食事は3つのマクロ栄養素(三大栄養素)で構成されています。

タンパク質(Protein)

• 1gあたり4kcal

• 筋肉の材料、酵素・ホルモンの構成成分

• 国際スポーツ栄養学会(ISSN)の推奨: 筋トレをする人は体重1kgあたり1.6〜2.2g

• 実践的な目安: 体重1kgあたり2g(体重70kgなら140g)

炭水化物(Carbohydrate)

• 1gあたり4kcal

• 主要なエネルギー源、筋グリコーゲンの補充

• 目安: 体重1kgあたり3〜5g(トレーニング強度による)

脂質(Fat)

• 1gあたり9kcal

• ホルモン生成(特にテストステロン)、細胞膜の構成、エネルギー源

• アメリカスポーツ医学会(ACSM)の推奨: 総カロリーの20〜35%

• 実践的な目安: 総カロリーの25%前後

このバランスを目的に応じて調整します。

【増量編】筋肉を最大化する食事戦略

「とにかく食べまくればいい」というのは間違いです。

脂肪ばかりついて、筋肉がつかない「ダーティバルク(汚い増量)」になります。

目指すのは、**リーンバルク/クリーンバルクアップ(筋肉を増やし、脂肪は最小限)**です。

増量の基本ルール

1. 消費カロリー + 300〜500kcal摂取

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究では、初心者が筋肉を効率的に増やすには、消費カロリーより300〜500kcal多く摂取するのが最適とされています。

例: 消費カロリーが2,700kcalなら、3,000〜3,200kcal摂取

急激に増やすと脂肪がつくので、週に0.25〜0.5kg増のペースを目指します。

2. マクロ栄養素の配分(増量期)

国際スポーツ栄養学会(ISSN)の推奨をベースに:

• タンパク質: 体重 × 2g (70kgなら140g = 560kcal)

• 脂質: 総カロリーの25〜30% (3,000kcalなら750kcal = 83g)

• 炭水化物: 残りのカロリー (3,000 – 560 – 750 = 1,690kcal = 422g)

増量期の1日の食事例(3,000kcal)

朝食(7:00) – 約700kcal

• オートミール 80g (約300kcal)

• バナナ 1本 (約100kcal)

• 全卵 3個 (約210kcal)

• プロテイン 30g (約120kcal)

間食(10:00) – 約300kcal

• プロテインバー 1本 (約200kcal)

• アーモンド 20粒 (約120kcal)

昼食(12:30) – 約800kcal

• 白米 200g (約330kcal)

• 鶏胸肉 200g (約220kcal)

• ブロッコリー 100g (約35kcal)

• オリーブオイル 大さじ1 (約120kcal)

• 味噌汁 (約50kcal)

トレーニング前(15:00) – 約200kcal

• バナナ 1本 (約100kcal)

• プロテイン 25g (約100kcal)

トレーニング後(17:00) – 約400kcal

• プロテイン 40g (約160kcal)

• おにぎり 2個 (約240kcal)

夕食(19:00) – 約700kcal

• 白米 200g (約330kcal)

• サーモン 150g (約280kcal)

• 野菜炒め (約90kcal)

就寝前(22:00) – 約200kcal

• ギリシャヨーグルト 200g (約120kcal)

• カゼインプロテイン 25g (約100kcal)

合計: 約3,100kcal

増量で重要な3つのポイント

ポイント1: こまめに食べる(食事頻度)

国際スポーツ栄養学会の研究では、タンパク質合成を最大化するには、3〜4時間ごとにタンパク質を摂取するのが理想とされています。

1日3食では足りません。5〜6食に分けて、常に栄養を体に送り込みます。

ポイント2: トレーニング前後の栄養補給(ニュートリエントタイミング)

スポーツ栄養学の研究により、トレーニング前後の栄養摂取が筋肥大に重要であることが証明されています。

• トレーニング前(1〜2時間前): 炭水化物でエネルギー補給

• トレーニング後(30分〜2時間以内): プロテイン20〜40g + 炭水化物で筋肉の回復を促進

ポイント3: 就寝前のプロテイン

2012年の研究(Res et al., Medicine & Science in Sports & Exercise)で、就寝前のカゼインプロテイン摂取が夜間の筋タンパク質合成を高めることが示されています。

寝ている間も筋肉は成長します。就寝前にゆっくり吸収されるカゼインプロテインを20〜40g摂取しましょう。

【減量編】筋肉を維持しながら脂肪を削る食事戦略

減量の失敗パターンは2つあります。

1. 極端にカロリーを減らして、筋肉まで落ちる

2. 我慢できずに暴飲暴食してリバウンド

正しい減量は、筋肉を維持しながらゆっくり脂肪を削ることです。

減量の基本ルール

1. 消費カロリー – 300〜500kcal摂取

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、健康的な減量ペースは週0.5〜1kgとされています。

これを達成するには、1日あたり300〜500kcalの不足を作ります。

例: 消費カロリーが2,700kcalなら、2,200〜2,400kcal摂取

2. マクロ栄養素の配分(減量期)

減量中は、筋肉を守るためにタンパク質を多めに。

2017年の研究(Longland et al., American Journal of Clinical Nutrition)では、減量中は体重1kgあたり2.3〜3.1gのタンパク質が筋肉維持に有効とされています。

実践的な配分:

• タンパク質: 体重 × 2.5g (70kgなら175g = 700kcal)

• 脂質: 総カロリーの20〜25% (2,300kcalなら約500kcal = 56g)

• 炭水化物: 残りのカロリー (2,300 – 700 – 500 = 1,100kcal = 275g)

減量期の1日の食事例(2,300kcal)

朝食(7:00) – 約450kcal

• オートミール 50g (約190kcal)

• 卵白 5個分 (約90kcal)

• 全卵 1個 (約70kcal)

• プロテイン 25g (約100kcal)

間食(10:00) – 約200kcal

• ゆで卵 2個 (約140kcal)

• りんご 1個 (約80kcal)

昼食(12:30) – 約650kcal

• 玄米 150g (約250kcal)

• 鶏胸肉 200g (約220kcal)

• サラダ(ドレッシングなし、レモン) (約50kcal)

• 味噌汁 (約50kcal)

トレーニング前(15:00) – 約100kcal

• バナナ 1本 (約100kcal)

トレーニング後(17:00) – 約180kcal

• プロテイン 40g (約160kcal)

夕食(19:00) – 約550kcal

• 玄米 100g (約170kcal)

• 白身魚(鱈など) 200g (約170kcal)

• 温野菜 200g (約100kcal)

• 味噌汁 (約50kcal)

就寝前(22:00) – 約120kcal

• カゼインプロテイン 30g (約120kcal)

合計: 約2,250kcal

減量で重要な3つのポイント

ポイント1: 炭水化物のタイミング調整

炭水化物を朝と昼、トレーニング前後に集中させ、夜は控えめにします。

これは代謝リズムとインスリン感受性の日内変動を考慮した戦略です。

ポイント2: 高タンパク質を維持

前述の研究通り、筋肉を守るために、タンパク質は体重の2.5倍程度を死守します。

ポイント3: チートデイ/リフィード(再給餌)

週に1回、炭水化物を通常の1.5〜2倍摂取する日を設けます。

これは代謝ホルモン(特にレプチン)の低下を防ぎ、代謝の落ち込みを防ぐ戦略です。

【維持編】現状を保つ食事戦略

すでに理想の体型に近い人、または増量と減量の間の休息期間。

1. 消費カロリー = 摂取カロリー

例: 消費カロリーが2,700kcalなら、2,700kcal摂取

2. マクロ栄養素の配分

• タンパク質: 体重 × 2g

• 脂質: 総カロリーの25%

• 炭水化物: 残り

維持期は最もストレスが少なく、長期的に続けられる食事法です。

食事を継続するための5つの実践テクニック

テクニック1: 食事を記録する(食事トラッキング)

MyFitnessPal、カロミル、あすけんなどのアプリで、毎日の食事を記録しましょう。

2019年の研究(Painter et al., Obesity)では、食事記録をつける人はつけない人より2倍以上の減量成功率があると報告されています。

テクニック2: ミールプレップ(週末にまとめて準備)

日曜日に1週間分の鶏胸肉と米をまとめて調理し、冷蔵・冷凍保存しておきます。

テクニック3: 同じ食事をルーティン化

平日は同じメニューをルーティン化し、週末だけ変化をつけるのがオススメです。

「決断疲れ(Decision Fatigue)」を避ける戦略です。

テクニック4: プロテインを活用

忙しい時、食欲がない時、プロテインは最強の味方です。

水に溶かすだけで、手軽に20〜40gのタンパク質を摂取できます。

テクニック5: 完璧を求めない(80/20ルール)

食事の80%を計画通りにできれば、20%は自由でOK。

大事なのは、1日の食事ではなく、1週間・1ヶ月の平均です。

本記事は身体のことについて取り上げました。そして次回は、マインドを深掘りします。

被害者意識を捨て、人生の主導権を取り戻す方法を解説します。

楽しみにしていてください。

【次回予告】第6回「被害者意識を捨てろ|人生の主導権を取り戻す」

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